本記事では12Vの鉛バッテリーの代表的なパラメータである、SOC, SOH, SOFについて解説をします。
SOC (State of Charge)
SOCとはバッテリーに貯蔵されている容量です。
現在の充電量と新品のバッテリーが完全に充電された最大容量の比として定義されています。
\(\displaystyle SOC=\frac{Q_{act}}{Q_{\max }}\ \)
\(\displaystyle Q_{act} \):現在の充電量
\(\displaystyle Q_{max} \):完全充電された最大容量
\(\displaystyle Q_{max} \) は欧州、JIS規格等で一般に20時間率容量として定義されています。
例えば、
\(\displaystyle Q_{act} \)=20Ah
\(\displaystyle Q_{max} \):=40Ah
の時
\(\displaystyle SOC=\frac{20Ah}{40Ah}\ \) =50%となります。
20時間率容量とは?
20時間率容量とは、「容量の20分の1に相当する電流[A]で、電圧が10.5Vに達するまで放電する」ことによって求められる容量です。
例えば、20時間率容量40Ahのバッテリーを例にすると、
「2Aの電流を20時間放電(2A×20h=40Ah)し続けると、バッテリー電圧が10.5Vになるバッテリー」を表しています。
なぜ20時間率容量が必要なの?
「わざわざ電流値を決めて定義しなくても、40Ah放電できるなら、2Aとか定義しなくてもいいのでは?5Aなら8h放電(5A×8h_40Ah)できるでしょ?」と考えられた方もいるのでは無いでしょうか?
実はそうならないため、電流値を決めて容量を定義する必要があります。
例えば、JIS D 5301 始動用鉛蓄電池の型式一覧の表[1]においては、以下のように記載されています。
例)型式55B24L
20時間率容量:42Ah (2.1Aを20時間放電)
5時間率容量:36Ah (7.2Aを5時間放電)
こちらからも、電流値が高くなると、放電できる容量が低下することが分かります。
電流により容量が異なる、別の一例を示します。
下図は10時間率容量40Ahのバッテリの特性を示したものです。
25℃の時に着目すると、4Aの時は容量100%を示していますが、40Aで放電すると約50%、120Aとなると20%以下の容量となることが分かります。

SOCの推定方法
充電状態SOCは、バッテリーの定常電圧から推定することができます。
具体的には以下の式の通りです。
\(\displaystyle SOC=\frac{Q_{act}}{Q_{\max }}\ \)
\(\displaystyle SOC=\frac{V_{current}-V_{min}}{V_{\max}-V_{\min}}\ \)
\(\displaystyle V_{current} \) :現在の定常電圧
\(\displaystyle V_{max} \) :完全充電状態(SOC=100%)のバッテリー定常電圧
\(\displaystyle V_{min} \) :SOC=0%のバッテリーの定常電圧。※
※定常電圧と充電状態の関係はSOC=20%以下となると非線形となるため、ここではSOC=0%の値を外挿。
しかし、実際には上記の式で精度よく求められるものでは無いのが実状です。 鉛バッテリーは状態の推定が難しく、あるメーカーでは±10%程度の精度[2]となっています。
SOH (State of Health)
SOHはバッテリーの劣化度を示すパラメータです。
鉛バッテリーは、経年劣化によりバッテリーを満充電しても新品時に対して容量が低下します。
つまり、劣化したバッテリーは最大まで充電しても新品時の100%の容量を持つことができなくなります。
新品を100%とした時に、どの程度の容量を持っているかを定義したものがSOHです。
以下のように定義されています。
\(\displaystyle SOH=\frac{Q_{current}}{Q_{new}}\ \times 100 \)[%]
\(\displaystyle Q_{current} \):現在の最大充電量
\(\displaystyle Q_{new} \):新品時の最大充電量
例えば、
\(\displaystyle Q_{current} \) =36Ah
\(\displaystyle Q_{new} \) =40Ah
とすると、
\(\displaystyle SOH=\frac{36Ah}{40Ah}\ \times 100 \)=90[%]
となります。
SOF (State of Function)
SOFとは特定の機能を満足するための値です。
これは特定の機能に対して都度定義され得るものであるため、一般的に定義できるものではありません。
例えば、エンジンをかけるときのSOFは、電圧降下のような高負荷時の電圧カーブを計算することによって定義されたり、無負荷時の評価においては、SOCがどれだけの時間持続できるか、という点により定義されます。
SOFは温度、SOH、SOCの状態によって依存し、これらを検出しているバッテリーセンサによって計算されるのが一般的です。
参考
[1] JIS D 5301 始動用鉛蓄電池
[2]古河電工 鉛バッテリ状態検知センサ
https://www.furukawa.co.jp/product/exhibition/pdf/technicaldata_02.pdf
コメント